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結婚したら自分のお金?結婚と夫婦共有財産の話。

つい先日、友人の結婚式がありました。 自分が式を挙げた後に呼ばれた最初の式だったので、自分のときを思い出してしまいました(´∀`*) とても良い式だった(´ω`) ところで、結婚式の費用負担はもちろん、その後の生活費の問題など、カップル間のお金の話は気になるところですよね。 僕の周りでも意外に話題に上ります(´・∀・`) 「お前んとこ、生活費はどうしてんの?」 「うちは家賃が俺で、食費が相手負担かな。」 「俺んところは全部ごっちゃになってる。」 なんて話もしばしば。 パートナーとは話しにくい話題でもあるため、まずは情報収集をする傾向にあるんでしょうか(´・∀・`) みんなお金事情は気になるところですね(´・∀・`) ということで、 今回は、結婚にまつわるみんな大好きお金の話をしていきたいと思います。 自分の給料は誰のもの? 今は少し減ったのかもしれませんが、片方がお金や財産を管理する、という夫婦も多いのではないでしょうか。 給料全額を他方に渡し、管理してもらって、適宜小遣いをもらうという形ですね。 離婚事件の相談を受けると、「財産状況がどうなっているのか自分は知らない」という方も一定数いらっしゃいます。 個人的には、自分が稼いだ金の行く末に無関心なのは驚きますが、夫婦が納得してその形をとっているのであれば他人がとやかく言うものでもありません。 では、法律的には結婚した場合の個人の財産は、全て夫婦の共有財産となってしまうのでしょうか? 実は、夫婦における財産の帰属について、民法にはしっかり規定されているのです。 民法762条 1項 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。 2項 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。 同条によれば、夫婦は原則別産制。 つまり、結婚前から持っている物や、結婚後に自分の名前で取得した財産は原則自分のものとなります。 見出しの問いであるお給料なども、 自分の名前で取得するので自分のものとなります。 もっとも、自分の給料だからといって、その給料収入が唯一の収入である場合、名義人が「俺の給料だ!」とイバって自由に使うと、後々離婚の問題に発展しかねませんので注意しましょう( ^ω^ ) 他方で、夫婦がそれぞれお金を出し合って取得するものなどは共有財産となります。 また

マンガの立ち読みは違法?二項犯罪と利益窃盗の話。

皆さん、マンガって読みます? 僕はマンガが大好きで、学生の頃はマンガ雑誌もよく読んでいました。 昔は立読みもできたため、気兼ねなしにコンビニなどで立読みしたこともしばしば。 この立読みって、よくよく考えてみたら、本自体は盗んでいないけれど、その中身はそっくり盗んだようなもの。 写真で本の内容を撮るのも同じですね。 記憶するか写真にするかの違いであり、 なんか違法っぽさがプンプンする感じが…。 ということで、今回は立読みについて考えてみたいと思います。 二項犯罪 二項犯罪って聞いたことありますか? ここで「はい!」と言える方がこのブログを読んでいたら、多分それは法律に関わっている方なので、ぜひ周りにどらログを勧めてください( ^ω^ ) 大部分が「いいえ」と答える前提で、いくつか条文を紹介します。 刑法235条  1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。 2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 刑法246条 1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2項  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 刑法249条 1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2項  前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。 上の各条文、それぞれ強盗罪、詐欺罪、恐喝罪であり、いずれも他人の財産を自分のものにすることから「領得罪」と呼ばれます。 これらの犯罪、どれも2項で同じように財産上の利益に関する場合を規定していますね。 財産上(不法)の利益とは、財物以外の財産上の利益の一切を意味しています。 借金をチャラにさせたり、タダでタクシーに乗ったりなどが典型例としてイメージしやすいかと思います。 財物を取得した訳ではないけれども、どちらも経済的に得していますよね。 こういったものを「財物」と区別して「財産上の利益」と呼び、暴行や脅迫などで脅したり、騙したりしてこれらの財産上の利益を得る行為(強盗・恐喝・詐欺)も犯罪として処罰対象にしています。 1項で形ある財物を自分のものにした場合を規定し、2項で形のない財産上の利益を得た場合を規定する構造です。

ポスティング撲滅!!立入禁止と不法侵入の話。

僕、マンションに住んでいるんですが、以前、仕事から帰ってきたらポストにお墓のチラシが入っていました。 一応小洒落たマンションで、ご年配の方がいないところだったのですが、墓のチラシ。 ふむ、今すぐ◯ねと。 というわけで、今回はポスティングについて、刑法的側面から考察したいと思います。 罪刑法定主義 さてさて、 以前の記事 の脱線話。 日本は罪刑法定主義(憲法31条)を採用しているので、法律に規定されていないことは犯罪になりません。 ポスティング自体は犯罪として規定されていませんので、ポスティング行為を捉えて犯罪であると考えることはできません。 ポスティングと住居等侵入罪 ポスティング行為自体を違法ということはできませんが、マンションへのポスティングって、共用部分にある集合ポストに一つずつ投函していくので、マンション敷地に入ることになりますよね。 この敷地に入る行為に関して、刑法上次の条文が問題となり得ます。 刑法130条  正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 刑法130条は、前段で住居侵入罪・邸宅侵入罪・建造物侵入罪・艦船侵入罪を規定し、後段で不退去罪を規定しています。 一つの条文で5つの犯罪。 めっちゃ欲張り。 今回はこの中の一つ、邸宅侵入罪が今回の主役です(`・ω・´) タイトルは聞き馴染みのあるものをチョイスしてしまいました(*´ω`*)ゞ 管理人と立入禁止立看板の法的意味 邸宅とは、人が現に住んでいない空き家などをいうのですが、マンションの共用部分は「住居」ではなく「邸宅」だというのが判例の立場。 「住居」ではない場合、「人の看守する」という構成要件が加重されるので、実務上「住居」か否かは意外に重要(´・∀・`) 構成要件?(´・ω・`)という方は こちらの記事 を! そして、「人の看守する」とは管理者による事実上の管理支配のことを言います。 これをマンションで考えてみましょう(`・ω・´) マンションって、入り口に管理人さんがいたり、防犯カメラが設置されていたりしているところも多いですよね。 つまり、管理人や防犯カメラによって、事実上の管理支配がなされているといえます。 そのため、こういったマンション

女性専用車両は憲法違反?私人間効力と憲法の話。ついでに約款も。

4月が始まり、入学入社の季節となりました。 コロナの時代にかかわらず、新入社員はもとより、新入生も毎朝満員電車に乗っておりますでしょうか。 僕は電車がホントに嫌いすぎて、1人重役出勤しとります( ^ω^ ) いつかボスからお叱りを受けそうですが、その分夜遅くまで働いているから大丈夫だと思っている。まぁ判断するのはボスだけれども。 ということで、今回は満員電車にまつわる女性専用車両について、法的に考えていきたいと思います。 憲法14条 突然ですが、憲法14条にこんな規定があります。 憲法14条   すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 2項 省略  最近、LGBTの方の運動も活発で、裁判例も出たところなので、耳にした方も多いのではないでしょうか。 今回は女性専用車両をこの条文に絡めて法的に検討していこうと思います。 女性専用車両と約款 女性専用車両とは、JRなどの電車を運行する会社が行っている、一部の時間帯の一部の車両を女性専用にするというサービスですね。 なお、小学生以下の男の子や、身体の不自由な方とその介助者は男性でも女性専用車両に乗れるそうです。 そもそも電車を利用する方は、この女性専用車両の取決めに従わなければならないのでしょうか? 鉄道会社は電車によって利用者を運送し、利用者はその対価として運賃を支払うものであり、 旅客運送契約 の一種です。 なので、この契約内容として女性専用車両の取決めがあれば、原則として利用者はこれに従う必要があります。 ちなみに旅客運送契約については商法589条以下に規定されていますが、僕はこの記事を書くにあたって初めて知りました( ^ω^ ) 普段商法使わんし(´・∀・`) 旅客運送契約が商法に規定されているとはいえ、契約である以上その内容は原則として合意で決まります。 またまたちなむと、これを契約自由の原則といいますが、今回の民法改正で真正面から民法に規定されることとなりました。 民法521条 1項 省略 2項   契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。 民法がわかりやすくなってきている(´・∀・`) さて、では女性専用車両、契約の内容になっているんでしょうか?? 多数の人が毎日使用する電車。それ

電子マネーって何?電子マネーと権利の話。

電子マネーって、今ものすごく身近になりましたよね。 僕も毎日使っています。 そんな電子マネーに関して、 今回は、僕が 最近扱った相続事件で疑問に思った ことをサクッと話していこうかと思います。 いつも無駄な導入が多いので、今回はサクサク行くで(`・ω・´)b 権利の種類 日本の民法では、権利には2種類しかありません。 物権と債権です。 物権とは、物に対する支配権のこと。 所有権が1番有名でサイツヨですね。 物に対する完全な支配権です。 その他の物権は、この所有権の一部を制限したり、所有権から生じる利益に特化したものとなります。 (そのため、前者を制限物権、後者を用益物権と言ったりします。) 物権は、物に対する支配権という強力な権利なので、一つの物で権利の競合が起きないようその発生や内容は法律で規定されており、これを物権法定主義といいます(民法175条)。 ちなみにこの物権法定主義にはあり得んくらい堂々と例外がありますが、ここでは考えません( ^ω^ ) 債権とは、人に対する請求権のこと。 特定の人に対して、あれしろ、これやれと請求できる権利のことです。 慰謝料など、人に対してお金を請求する権利もこの債権に分類されます。 ちなみに、大学の講義で、債権の「債」の字は訓読みで使われない、的な話をいまだに覚えています。 どなたかこの「債」の字の訓読みを知ってる方がいたら教えてください( ^ω^ ) 電子マネーの法的性質 電子マネーは、物権と債権、どちらに分類されるのでしょうか? 電子マネーは物権として法定されていないので、消去法で債権に該当します。 まぁ民法ができた当時は今のようなハイテク現代ではありませんから、法定されていないのもある意味当然っちゃ当然か(´・∀・`) 実質を考えても電子マネーは加盟店という特定人に対して、お金と同様に扱え、というものですから、債権っぽそうですね。 電子マネーと利用規約 債権は合意か法律によって発生します。 いきなりΣ(=ω= ;)ってなった方は コチラ の記事を読み直しましょう( ^ω^ ) 電子マネーも債権の一種だとすると、合意によって発生し、その権利内容は合意=利用規約によって定まります。 そして、相続事件で遺産に電子マネーを見つけてしまった真面目などら弁は何気なーく、かつ、しっかりと電子マネーの利用規約(みんなが読み飛ばすヤツです。

写真と実物?勘違いと錯誤の話。

僕、幼稚園生くらいのときかな、ハワイに行ったことがあるんですよ。 5歳児海外デビュー。 小さい頃なんで、ほとんど覚えていませんが、今でも覚えていること。 英語のわからない5歳児どら弁は、メニューにある写真を見て、インゲン豆のソテーとライスセットを注文しました。 ベジタリアンではありません( ^ω^ ) そんなどら弁幼児の前に置かれたものは、 どこからどう見てもグリーンピースとライスセット。 メニューを見返してもグリーンピースとライスセットは存在しませんでしたが、言葉の壁に阻まれ、涙の塩味を足した甘しょっぱいグリーンピースを頬張りました(´・ω・`) というわけで、今回は写真と実物が違った場合を法的に考えてみようと思います。 ちなみに冒頭の例は僕の勘違いではありません。明らかに店が悪い(`・ω・´) 勘違いと契約 写真と実物が違うことってよくありますよね。 多少の違いは誤差の範囲だと思うのですが、それこそ冒頭の例のように、品物そのものが別だったり、およそ誤差と言えないレベルの差がある場合に、法律的にはどうなるのでしょうか? コチラ の記事で説明したとおり、契約は意思の合致で成立します。 そして、契約内容となるべき意思表示の内容は、客観から判断されます。 冒頭の例の場合、英語が読めなかったので言い切れませんが、当該メニューには写真が掲載されており、その写真を示して注文しました。 そのため、どら弁の意思表示の内容は客観的に「写真の料理=インゲン豆の注文」であることが読み取れます。 他方で、店側は、特異な店だったのか、世間でいうインゲン豆の料理=グリーンピースの料理だという新常識があったのかもしれません。 その場合、店側の認識としては、「あ、コイツは(インゲン豆こと)グリーンピースを注文しているんだ」と 誤解 したわけです。 客観的にはインゲン豆の料理の注文という意思表示が合致しているため、インゲン豆の料理を提供するという契約が成立することになりますが、実は民法にはこういう規定があるんです。 民法95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。 ① 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 ②以下省略 3項  錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合

犯罪者への道!犯罪の成否と刑事裁判の話。

皆さん、突然ですが犯罪者はいつ犯罪者になるかご存知ですか? はい、物騒ですね。もう気にしません( ^ω^ ) 今日は総論的に、刑事裁判の基本をわかりやすく説明しようかと思います。 犯罪の成立 犯罪の成立には大きく3つ、満たすべき要件があります。 ①構成要件該当性 ②違法性 ③責任 ① 構成要件該当性 犯罪は、法律で全て規定されています。 逆に法律で規定されていないと殺人だって犯罪ではありません。 これを罪刑法定主義といい、憲法31条で定められています。 ちなみに殺人は刑法199条で明確に定められてるので、まごう事なき犯罪です( ^ω^ ) 刑法199条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。 殺人罪でいえば、「人を殺した者」という部分を構成要件といい、これに該当する行為をすることで構成要件該当性が充足されます。 ②違法性 構成要件に該当しても違法でなければいけません。 まぁ法律で規定されている犯罪は基本違法ですから、構成要件に該当すればこの違法性は推定されます。 ここで問題となるのは正当防衛などですね。 人を殺す行為でも、殺されかけた防衛のために殺してしまったら、正当防衛として違法性がなくなり、犯罪にはなりません。 これを難しくいうと違法性が阻却される、といいます( ー`дー´) はい、厨二です。 ちなみに、正当防衛にかこつけて過剰な防衛行為をしてしまうと、過剰防衛(ネーミングそのまま(´・∀・`))として違法は阻却されませんので気をつけましょう( ^ω^ ) ③責任 悪いことに刑罰を科すのは、二度と起こさせないため、という意味合いがあります(他の意味もありますが今回はスルーします( ^ω^ ))。 そのため、行った行為が「悪いこと」だという非難の対象であることを理解できなければ、刑罰を科しても「なぜ刑罰が科せられるのか」を理解できません。 刑罰を意味のあるものにするためにも、この「責任」という要件が必要なのです。 非難可能性(やった行為を「悪いことだ!」と非難できる余地)とも言えますね。 時たま、癲癇の持病のある方が運転中に癲癇の症状を起こして交通事故を起こしたものの、無罪となる裁判例がニュースになりますが、その理由はこの「責任」の要件を満たさない、というもの。 わざと癲癇を起こして交通事故を生じさせたわけではありませんから、非難可能性がない