女性専用車両は憲法違反?私人間効力と憲法の話。ついでに約款も。

4月が始まり、入学入社の季節となりました。

コロナの時代にかかわらず、新入社員はもとより、新入生も毎朝満員電車に乗っておりますでしょうか。

僕は電車がホントに嫌いすぎて、1人重役出勤しとります( ^ω^ )

いつかボスからお叱りを受けそうですが、その分夜遅くまで働いているから大丈夫だと思っている。まぁ判断するのはボスだけれども。


ということで、今回は満員電車にまつわる女性専用車両について、法的に考えていきたいと思います。


憲法14条


突然ですが、憲法14条にこんな規定があります。


憲法14条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2項 省略 


最近、LGBTの方の運動も活発で、裁判例も出たところなので、耳にした方も多いのではないでしょうか。

今回は女性専用車両をこの条文に絡めて法的に検討していこうと思います。

女性専用車両と約款


女性専用車両とは、JRなどの電車を運行する会社が行っている、一部の時間帯の一部の車両を女性専用にするというサービスですね。
なお、小学生以下の男の子や、身体の不自由な方とその介助者は男性でも女性専用車両に乗れるそうです。


そもそも電車を利用する方は、この女性専用車両の取決めに従わなければならないのでしょうか?

鉄道会社は電車によって利用者を運送し、利用者はその対価として運賃を支払うものであり、旅客運送契約の一種です。
なので、この契約内容として女性専用車両の取決めがあれば、原則として利用者はこれに従う必要があります。

ちなみに旅客運送契約については商法589条以下に規定されていますが、僕はこの記事を書くにあたって初めて知りました( ^ω^ )
普段商法使わんし(´・∀・`)


旅客運送契約が商法に規定されているとはいえ、契約である以上その内容は原則として合意で決まります。

またまたちなむと、これを契約自由の原則といいますが、今回の民法改正で真正面から民法に規定されることとなりました。

民法521条 1項 省略
2項   契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

民法がわかりやすくなってきている(´・∀・`)


さて、では女性専用車両、契約の内容になっているんでしょうか??

多数の人が毎日使用する電車。それこそ利用の数だけ旅客運送契約が存在することになりますが、その内容を個別に決めることはほぼ不可能です。
そのために生み出されたのが約款です。

民法改正で条文として規定されることになったこの約款。
インターネット上で何かサービスを利用するときの「利用規約」などが有名ですね。

契約当事者の一方が決まっており(鉄道会社など)、もう一方が不特定多数(利用者)の場合によく利用されます。

あらかじめ利用規約として契約内容を規定しておき、包括的に承諾をもらうことで契約として成立させる法技術です。

ちなみに、当ブログのプライバシーポリシーもこの約款の一種です( ^ω^ )


さてさて、では女性専用車両の話に戻ります。
脱線がすごいのはいつものことです( ^ω^ )

JRの運送約款(旅客営業規則)を確認したところ、この女性専用車両という利用者制限に関する規定は見つかりませんでした。
かるーくググったところ、どの鉄道会社も女性専用車両に関する規定を設けているところはないようです。

つまり、女性専用車両という利用者を制限するサービスは、契約内容になっておらず、法的な義務はないようですね。
あくまで利用者の協力を求めるもののようです。

そのため、仮にこれに従わなかったとしても、白い目で見られることを除けば、法的に特に問題ありません。




やべぇ、憲法の話に入る前に話が終わった。。。


憲法上の問題点


さて、ここで話が終わるとタイトルとの齟齬が生じてしまうので、無理矢理つなげます( ^ω^ )

仮に運送約款上、女性専用車両という利用者制限条項が定められていた場合、憲法上、何か問題があるのか考えてみたいと思います。


憲法って何?


突然ですが憲法とは何なのでしょうか?



一言で言うと国の最高法規です!

キングオブ法律!

小話ですが、日本の憲法は改正要件が厳しいので、簡単に変えられないという意味の硬性憲法という種類に分類されます。

今まで日本国憲法の改正はありませんので、胸を張って硬性憲法に分類できますね( ^ω^ )


最高法規というくらいなので、この憲法に違反する法律は無効となります(`・ω・´)

最近では、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1にする規定が憲法14条に違反するとして、同条文が削除されました。
他にも離婚後300日の再婚禁止期間の定めについても、違憲判決が出たりしています。


私人間効力と間接適用説


憲法上のメイン論点の一つとして、私人間に憲法が適用されるのか、という私人間効力の問題があります。


憲法の役割は明確で、国家と国民との関係を規律しています。

特に、基本的人権を定め、国家に対しその人権を侵害することを禁止している点が重要ですが、その他にも国の基本的な統治機構を定めたりしており、とても遠いようで、身近な法だと言えます。

これに対して、民法などの私法は、私人と私人の関係を規律します。

契約などはまさに私人間の問題ですね。

以上のとおり、憲法は国家と国民との関係を規律するものですから、鉄道会社と利用者という私人間の関係に、憲法は基本的には出てきません。

ニュースで違憲合憲が問題になっている話題を注意して見ると、国や地方公共団体と私人との関係を問題にしていることに気づくかと思います。
冒頭の同性婚の問題も、同性同士の婚姻届を役所が受理しなかったことを問題としていますね。




………。


本日二度目の終了疑惑。



いやいや、まだ繋がりますよ!!


確かに、女性専用車両は私人間の問題なので、憲法が直接出てくることはありません。

もっとも、憲法に違反する法律は無効となるように、全ての法律は憲法に沿うものでなければなりません。

そのため、私人間を規律する民法も、憲法の理念に沿って解釈されるべきであり、法令の範囲で自由に規定できる契約(民法521条2項)も当然憲法の理念に沿っている必要があります。

つまり、私人間であっても民法の中に憲法の理念を読み込むことで、間接的に憲法が適用されていることになるんですね。

文系なので作者の気持ち大事(`・ω・´)

これを「間接適用説」といったりします。ほんとネーミングそのまんまだけど、その方がわかりやすいしね(゚∀゚)


本件へのあてはめ


これを女性専用車両という利用者制限条項に関して考えると次の2点が問題となり得ます。

①そもそもこの条項が公序良俗に反し無効とならないか

②仮に条項が有効だとして、特定の事情下において(例えば緊急性があったとき等)女性専用を貫き乗車拒否した場合に、当該乗車拒否行為を理由に何か請求できないか


まず、①において関連する条文はこちら↓

民法90条  公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。


この「公の秩序又は善良の風俗」に反するかを考える上で、例えば冒頭の憲法14条の平等原則の理念を読み込みます。

憲法14条の平等とは、合理的な区別はOKで、不合理な差別はアウトというもの。

ものは言いようです( ^ω^ )

そもそもそのような規定が約款上ないので想像ですが、女性専用車両は、痴漢などの犯罪行為の防止、一部の時間帯の一部の車両のみという制限的な運用であることなどから、合理性はあると思うので、公序良俗違反で無効とは言い難いと思います。


では、②はどうでしょうか?
これに関連する条文は以前も出てきたこちら↓

民法709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


こちらも想像なので、特定の事情次第ではありますが、「侵害した」かどうかを考えるにあたって、憲法の理念が斟酌され得ると言えます。

まぁ要はケースバイケースです( ^ω^ )

法律というのは抽象的に規定されている以上、特定の事案でどうかを種々個別に検討する必要があり、そのため基本的には一般論として結論を出すことは難しいのです(´・∀・`)

事情が違けりゃ結論も違い得ます( ^ω^ )

個別の具体的事情をいかに拾って、依頼者のために主張するかが弁護士の腕の見せ所でもあります(`・ω・´)


今回のまとめ


今回のまとめとしては、憲法めっちゃ大事だけど、後光的に存在してる感じっす、っていうことをわかっていただければ十分かと。

一気にバカっぽくなったけど、難しい話が長かったので、要点をかいつまみ過ぎてみた( ^ω^ )

話の流れで約款も絡めて考察したので、二記事分ですな。

法学部1年生におすすめかもしれん。

4月に入学した新入生の方!法学の勉強はぜひどらログで( ー`дー´)

それではまた次回!


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