電子マネーって何?電子マネーと権利の話。

電子マネーって、今ものすごく身近になりましたよね。

僕も毎日使っています。

そんな電子マネーに関して、今回は、僕が最近扱った相続事件で疑問に思ったことをサクッと話していこうかと思います。

いつも無駄な導入が多いので、今回はサクサク行くで(`・ω・´)b

権利の種類


日本の民法では、権利には2種類しかありません。

物権と債権です。

物権とは、物に対する支配権のこと。
所有権が1番有名でサイツヨですね。
物に対する完全な支配権です。

その他の物権は、この所有権の一部を制限したり、所有権から生じる利益に特化したものとなります。
(そのため、前者を制限物権、後者を用益物権と言ったりします。)

物権は、物に対する支配権という強力な権利なので、一つの物で権利の競合が起きないようその発生や内容は法律で規定されており、これを物権法定主義といいます(民法175条)。
ちなみにこの物権法定主義にはあり得んくらい堂々と例外がありますが、ここでは考えません( ^ω^ )


債権とは、人に対する請求権のこと。
特定の人に対して、あれしろ、これやれと請求できる権利のことです。

慰謝料など、人に対してお金を請求する権利もこの債権に分類されます。

ちなみに、大学の講義で、債権の「債」の字は訓読みで使われない、的な話をいまだに覚えています。
どなたかこの「債」の字の訓読みを知ってる方がいたら教えてください( ^ω^ )

電子マネーの法的性質


電子マネーは、物権と債権、どちらに分類されるのでしょうか?


電子マネーは物権として法定されていないので、消去法で債権に該当します。
まぁ民法ができた当時は今のようなハイテク現代ではありませんから、法定されていないのもある意味当然っちゃ当然か(´・∀・`)

実質を考えても電子マネーは加盟店という特定人に対して、お金と同様に扱え、というものですから、債権っぽそうですね。

電子マネーと利用規約


債権は合意か法律によって発生します。
いきなりΣ(=ω= ;)ってなった方はコチラの記事を読み直しましょう( ^ω^ )

電子マネーも債権の一種だとすると、合意によって発生し、その権利内容は合意=利用規約によって定まります。

そして、相続事件で遺産に電子マネーを見つけてしまった真面目などら弁は何気なーく、かつ、しっかりと電子マネーの利用規約(みんなが読み飛ばすヤツです。)を読みました。

すると。

電子マネーは死亡によって消滅する
とか
電子マネーは相続されない
とか各規約に書いてあるじゃないですか!!

もうね。


(`pωq´)ゴシゴシ

(゚Д゚≡゚Д゚)

(`pωq´)ゴシゴシ

∑( ̄Д ̄ )

状態です。


どら弁は何をびっくりしたのか。
それは次の条文が関係します。

相続法との関係

まず、「相続されない」と規定する利用規約が相続法に違反するのではないか?という点。

民法には次のような規定があります。

民法896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


基本全部相続されるけど、その人(亡くなった方)専用の権利義務については相続されません♪ということですね。

そして、その人専用かどうかは、権利義務の性質等から決まりますが、自由に相続される・されないを当事者が勝手に決められるとすれば、法的安定性を害します。

そのため、「相続されません」と規定されている電子マネーが、民法896条にもかかわらず本当に相続されないのか、疑問に思いました。

民法・消費者契約法との関係

また、最近になって民法の債権法分野が大幅改定され、新たに定型約款に関する条文が定められました。

定型約款とは、まぁ利用規約だと思ってください( ^ω^ )
それに関する条文として、民法に次の条文が加えられました。

民法548条の2  1項 省略
2項 前項の規定にかかわらず、同項の条項(=定型約款中の個別の条項)のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
※カッコ書きは僕の注意書きです

この条文に似た条文が消費者契約法でも規定されています。

消費者契約法第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項で合って、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

上二つの条文は、要は、信義誠実の原則(民法1条2項)に照らして消費者(利用規約を押し付けられる方)の利益を一方的に害するものはダメっすよーヽ(・∀・)ということ。

こと電子マネーの利用規約に照らして考えると、せっかくお金をチャージしたのに一方的に「死亡で消滅する」と規定して、死亡という偶然かつ必然の事情で一方的にチャージ相当額が全て消滅するのは、消費者の利益を一方的に害するものと言えそうでは?という疑問も湧きました。


以上のとおり、電子マネーの利用規約は、よくよく考えると難しい問題がありそうですね(´・∀・`)


僕の対処法


電子マネーには理論的には難しい問題があるっぽそうなんですが、僕は学者ではありません(´・∀・`)

依頼者の利益のために頑張ればいいのです(`・ω・´)
つまり、今回でいえばチャージされた電子マネー分をしっかり精算させること。


そこで僕が行ったことは、各社への問合せです( ^ω^ )

実は、電子マネーは資金決済法という法律で規制されており、原則払戻しができないんです。
もっとも特別な事由があれば払戻しも例外的にできるので、上の問題は横に置きつつ、とりあえず各社に問合せて払い戻してもらうようお願いしました。

利用規約上、死亡時の払戻し手続について規定しているところもあったし、上記の観点も念頭に置きつつ話をすることで、一応今のところ対応してもらっております。

なので、まずは会社に問合せ!これが一番ですね( ー`дー´)

もし断られた方がいる場合には、裁判例を作ることができるかもしれないので僕までご依頼を( ^ω^ )
もう既に解決してる問題かどうかは、依頼が来た段階でめっちゃ調べます(`・ω・´)笑


あとがき


みなさん利用規約、読んでます?笑
読まずにスクロールしてポチッとしてる方が多いと思いますが、けっこー重要なことが書いてあります。

全部読んでる時間ない、という方は次の規定だけピックアップして確認しておきましょう。
①義務に関する規定
②解除に関する規定

とりあえずこの二つの規定さえ読んでおけば、自分が何をしなきゃいけないのか、何をしちゃいけないのかが一応わかります。

なんかすごく真面目な感じになりましたが、こういうのもたまには良きですかね。

いつも記事を書くときは「今回こそは簡単に終わらす!」と思っても、なかなか長文になってしまいますが、今後もかわらずお付き合いください(*´ω`*)ゞ


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